ドイツの血液検査と説明

1). ヘモグロビン

血液中、赤血球の中に存在するタンパク質。酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割。体内の鉄分が不足するとヘモグロビン不足となり、脳へ十分な酸素が運ばれずに貧血(立ちくらみ、めまい、失神)の原因となる。

 

対処方法: 鉄や、ヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質・鉄の吸収を高めるビタミンCの摂取。 鉄もたんぱく質も多く含む食品は牛肉やレバー、カツオなどの赤身の魚、あさりなどが、ビタミンCが多い食品には緑黄色野菜・果物など。

 

ヘモグロビンの数値が高過ぎる場合:

体重低下・慢性的な疲労・目の充血・身体の各所のかゆみなどの症状が現れ、 放置するといずれは脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる怖い病気なので、詳しい診断を受ける。

  

2). ヘマトクリット値

血液中に占める赤血球の体積の割合を示す数値。貧血検査などに利用される。全ての血液100ml中の赤血球容積の割合を%で表現している。 成人男性で40-50%、成人女性で35-45%程度が正常値であるとされる。

  

3). 赤血球

不足すると:

貧血(倦怠感・息切れ、立ちくらみなどの症状が起きてしまう)

 

不足の原因:

血液を造るための造血細胞自体の異常や、ビタミンや鉄などの原料不足により赤血球の産生が低下することによって貧血になります。原料不足の原因には、極端なダイエットや偏食、妊娠や授乳などによる需要の増加、生理、子宮筋腫などの婦人科疾患や胃潰瘍、胃がん、大腸がんなどの消化器系の疾患などによる慢性的な出血があげられます。

 

過多だと:

多血症と定義され、血液が"濃い"状態で、顔が赤らんだり目が充血したりすることもあります。多血症は血液を"ドロドロ"にして、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクとなりうるので注意が必要です。

  

). HbA1(ヘモグロビンエーワンシー)

6,5%以上で糖尿病の疑い。ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がヘモグロビンとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなります。

 

いったん糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元には戻りません。血糖値の低い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が少くなるので、HbA1cは低くなります。血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなるので、HbA1cは高くなります。HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。

  

5). LDL(悪玉)コレステロール

血中に多く存在すると血管壁に沈着、蓄積し、血管の壁で炎症反応を起こして血管の内壁を傷つけ、動脈硬化に起因する心筋梗塞や脳梗塞などの誘引となる

  

6). HDL(善玉)コレステロール

増えすぎたコレステロールを回収し、さらに血管壁にたまったコレステロールを取り除いて、肝臓へもどす働き

  

7). GOT, GPT

どちらも肝臓の細胞の中にある酵素で、肝機能が悪くなると、GOTGPTという酵素の値が上がります。心筋梗塞や筋肉がこわれた場合、あるいは赤血球がこわれた場合(溶血)には、GOTの値だけが上がってGPTの値は上がらないことがあります。肝臓の細胞がこわれたときには、多くの場合GOTGPTがいっしょに増加します。

 

GOTGPTの正常値は、どちらとも40国際単位以下です。これらが少なすぎることで問題になることはまったくありません。健康診断で問題になるのは、100前後のときです。100以下の場合には、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝などが考えられます。

 

お酒を飲む人の場合は、節酒あるいは禁酒することによって、下がることがあります。慢性肝炎や肝硬変の状態が悪い時期には数百くらいまで上がりますが、回復すると二桁になります。しかし、健康診断で100以下で指摘される多くの場合には、脂肪肝です。

  

8). アルコール性肝障害で早い時期に上昇し,アルコール性脂肪肝で100300IU/l,アルコール性肝線維症・肝硬変では200500IU/l,アルコール性肝炎では500IU/l以上の上昇を示す。γ-GT値と飲酒量は平行せず,肝病変の進行度との相関もない。禁酒によって速やかに低下する(2週間で半減)。

  

9). ビリルビン

 黄色のヘムの通常の分解代謝物である。ヘムはヘモグロビンの構成物であり、赤血球の主要構成物の一つである。ビリルビンは、胆汁または尿から排出され、異常な濃度上昇は何らかの疾病を指し示している。ビリルビンは、痣の黄色の原因物質であり、黄疸により黄色く変色が起こる原因物質である。

  

10). アルカリホスファターゼ

肝臓、腎臓、骨芽細胞、胎盤、小腸などに分布。この値が上昇する場合には、これらの臓器の壊死や破壊に伴う修復活動として細胞再生が行われており、これに伴ってALPの合成亢進が行われ、血中への放出が進んだものと考えられる。

 

前述の臓器に損傷があった場合いずれの場合もALP値の上昇を招きうるが、臨床検査ではALPは主として肝機能の指標の一つとして扱われることが多い。

  

11). リパーゼ

消化液(胃液、膵液)に含まれ、脂質の消化を行う消化酵素。

  

12). アミラーゼ (amylase)はジアスターゼとも称される、膵液や唾液に含まれる消化酵素。

 

血液中、尿中のアミラーゼが増加した場合は、急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵嚢腫、耳下腺炎、慢性腎不全など。慢性膵炎の末期には基準値より低い数値を示します。

 

膵臓、睡液腺の細胞に異常があることを示しています。特に膵臓に炎症がある場合や膵管の通りが悪くなった場合に高い数値を示すため、膵炎や膵臓の腫瘍マーカー(病気の場合や程度を特定する検査)として有効です。

 

アミラーゼ値に異常がある場合は背中に痛みがないかどうか確認することと、超音波検査やCT検査を行い、膵管が太くなっていないかどうかや膵臓の形に変化がないかどうかを調べます。

 

膵臓は胃の裏側にある臓器で、しかも自覚症状が少なく、癌の早期発見が難しい臓器です。近年発症率が高まっていますので、検査値に注意すると同時に背中の痛み、黄疸、体重減少などの小さな変化を見逃さないようにしましょう。

  

13). クレアチニン

筋肉を動かすためのエネルギーを使うと発生します。血液に含まれるクレアチニンは、腎臓でろ過されて、尿として排出されます。

 

クレアチニンは尿以外では体の外に排出されません。そのため、血液中のクレアチニン値が高い場合は、腎臓の働きが悪くなり、尿が作れなくなっているかもしれません。

  

14). 尿素

基準値より高い場合は、腎炎などの腎機能障害、尿毒症、腎血流量の減少、消化管出血など。 低い場合には肝硬変、重症の肝不全、妊娠、慢性の低栄養状態などが考えられます。 腎臓も肝臓と同じように異常があっても自覚症状はほとんどありません。

  

15). 尿酸

尿酸値が高いと「痛風になる」と考える人が多いと思いますが、実は高尿酸血症のリスクは痛風だけではありません。高尿酸血症は心血管疾患や慢性腎臓病など、動脈硬化に関連した疾患のリスクでもあります。

 

血中の尿酸値が高い状態が継続すると、関節内に尿酸塩として蓄積してしまいます。その結果、痛風発作が起きるのです。痛風発作とは急性の単関節炎であり、脚の関節に多いと言われています。

  

16). クレアチニンクリアランス

血清中のクレアチニンのクリアランス(腎臓が身体の老廃物を排泄する能力)を計算し、腎機能を推定する検査値。

  

17). 血清中アルブミン

アルブミンとは、血液中に100種類以上存在しているタンパク質(総タンパク)のうち、もっとも多くを占める(約60%)タンパク質のことです。血液検査の項目では、AlbAlbumin)と記載されることもあります。

 

アルブミンの主なはたらきは、血液中の水分をとどめて血管内の浸透圧を維持したり、血管内の物質の運搬や保持をしたりすることです。そのため、何らかの原因で血液中のアルブミン量が低下すると、血管の外に水分が漏れ出てしまいます。これによって、全身のむくみ、腹水や胸水(お腹や胸に水がたまること)などの症状を引き起こします。

  

18). α1-グロブリン

主に肝臓で産生され腎糸球体基底膜を容易に通過して近位尿細管より再吸収・異化され,正常ではほとんど尿中には排泄されない。よって尿を測定対象として尿細管障害,腎糸球体障害の局在・鑑別診断のマーカーとして利用される。血清での測定では,腎糸球体濾過能,肝機能の評価としても利用される。しかし,α1-mIgAと共有,非共有結合をしており,IgA濃度の増加と血中からのクリアランスの低下により,その血中濃度は上昇するため,IgAの変動にも影響を受けやすい。

 

高値疾患:

IgA型多発性骨髄腫, IgA増加症, ネフローゼ症候群, 急性・慢性糸球体腎炎, 慢性腎不全

低値疾患:

肝硬変症, 肝切除, 劇症肝炎

  

19). α2-グロブリン

分子量約72万の巨大分子蛋白で、血清蛋白分画のα2分画に属します。主に凝固・線溶に関わる蛋白分解酵素に結合し、その活性を阻害する働きを持っています。巨大分子である性質から、蛋白尿を示すネフローゼなどの疾患でも腎から排泄されにくく、血中濃度が上昇します。

 

異常高値:

ネフローゼ症候群、高エストロゲン血症、慢性炎症性疾患

異常低値:

線溶亢進(DIC、線溶療法時)、急性膵炎、前立腺癌(骨転移のある症例)、肝機能障害

  

20). 血清中B 1グロブリン

血漿中に存在する球状タンパク質のグループ。

グロブリンは肝臓でつくられるたんぱく質で、血液中を流れるたんぱく質の主成分のひとつです。 肝臓にリンパ球が増えたり、肝の線維化が進むと増加します。 γ-グロブリンの上昇は慢性肝炎や肝硬変の進展を疑う指標になります。

  

21). 血清中ガンマグロブリン

血漿中に存在する球状タンパク質のグループ。

グロブリンは肝臓でつくられるたんぱく質で、血液中を流れるたんぱく質の主成分のひとつです。 肝臓にリンパ球が増えたり、肝の線維化が進むと増加します。 γ-グロブリンの上昇は慢性肝炎や肝硬変の進展を疑う指標になります。

  

22). 血清中B 2グロブリン

血漿中に存在する球状タンパク質のグループ。

グロブリンは肝臓でつくられるたんぱく質で、血液中を流れるたんぱく質の主成分のひとつです。 肝臓にリンパ球が増えたり、肝の線維化が進むと増加します。 γ-グロブリンの上昇は慢性肝炎や肝硬変の進展を疑う指標になります。

  

23). 免疫グロブリンA

高値:

膠原病。要はIgG型の抗体が産生される病気なので、抗核抗体関連の膠原病(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎/多発性筋炎、全身性強皮症、混合性結合組織病)がまず挙げられます。 その他に関節リウマチ、IgG4関連疾患、サルコイドーシスなど。

 

低値:

慢性の肺感染症、副鼻腔炎、アレルギー、喘息、鼻茸(はなたけ)、慢性下痢、またはまれに、全身性エリテマトーデスや炎症性腸疾患(通常は胃腸症状がみられ、しばしば再発したり、重篤になったりする)などの 自己免疫疾患

  

24). 免疫グロブリンM 

IgM症候群は、免疫グロブリンMIgM)の量が正常か多く、他の免疫グロブリンが少ないかまったくないことを特徴とします。 その結果、細菌感染症にかかりやすくなります。 IgM症候群がある小児では、副鼻腔や肺の感染症が頻繁にみられます。

 

25). 免疫グロブリンG 

IgGの異常低値には,幼少時より易感染を繰り返す先天的な免疫グロブリン産生不全と,他疾患に続発するもの,放射線や薬剤によるもの,あるいは体外への喪失によるもの。

 

IgG高値になる膠原病とは、要はIgG型の抗体が産生される病気なので、抗核抗体関連の膠原病(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎/多発性筋炎、全身性強皮症、混合性結合組織病)がまず挙げられます。 その他に関節リウマチ、IgG4関連疾患、サルコイドーシスなど。

 

免疫グロブリン全てに言えること:

各種免疫不全,感染症,腫瘍,自己免疫疾患などのモニタリングとして,通常IgGIgAIgMの三者を同時に測定することが多い。この検査は,蛋白分画でM蛋白が疑われるとき,血漿蛋白が低値のとき,IgA腎症やIgA型多発性骨髄腫などの経過観察として用いられる。低下の場合,小児の場合は原発性免疫不全を疑い,疾患をもつ場合は続発性の免疫不全を考える。

  

26). トランスフェリン

鉄欠乏状態濃度が高値となることがあげられる。同様な状態になる妊娠や,真性多血症でも増加することがある.

 

高値:

鉄欠乏性貧血、  真性赤血球増多症

 

低値:

肝機能障害、  心筋梗塞、  ネフローゼ症候群、  遺伝性無トランスフェリン血症、  炎症性疾患、  感染症、  蛋白漏出性胃腸症、肝機能障害,感染症,組織壊死(心筋梗塞など)ほか炎症性疾患,ネフローゼ症候群,蛋白漏出性胃腸症,遺伝性無トランスフェリン血症。

  

27). トランスフェリン飽和

鉄,鉄結合能,フェリチン,およびトランスフェリン飽和度の典型的な血清正常値

 

28). INR(Prothrombin Time) International Normalized Ratioプロトロンビン時間国際標準化比

 

血液の凝固能を示し、PT-inrが高いと?

PTの基準値は9.512.0秒とされており、これを大きく超える場合には凝固因子の先天的な欠乏症や異常症、ビタミンKの不足や吸収障害、肝硬変をはじめとする肝障害などが疑われます。

 

PTが低いと?

PTは、血液凝固因子と呼ばれる、血液を固める作用のあるたんぱく質に関連した検査値です。 血液凝固因子は、現在13種類見つかっていますが、そのほとんどは肝臓で作られます。 したがって、肝機能が低下すると、血液中の血液凝固因子が減少して、血液が固まるのに時間がかかるようになります。

  

29). IgE抗体

高値:

IgE抗体は、体に外部から侵入してきた異物(アレルゲン)に選択的に結合することで、その後に引き起こされる生体反応(くしゃみや鼻汁、かゆみなど)を介して異物を体外に排出し、体を守る役割の一部を担っています。 体内にIgE抗体が増えると、体に不調を感じるほどに、生体反応が強くなります。

  

30). 糸球体濾過量:

年齢と血清クレアチニン(Cr)値から推定した「推算GFReGFR)」が用いられます。 健康な場合は、GFR100ml//1.73m2前後です。 60ml//1.72m2未満が持続していれば、腎機能の低下は明らかであり、慢性腎臓病と診断されます。